WBC開幕

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今日3月5日、東京ラウンドから始まるWBC(ワールド・ベースボール・クラッシック) 。誰が監督になるかで紆余曲折したのがずいぶん前のような気もしますが、最終的に選ばれたのは読売ジャイアンツの原辰徳監督でした。WBCを含めた国際試合の監督に、日本の現役のプロ野球監督が選ばれることは、非常に珍しいケースでもあります。

レギュラーシーズンのような長丁場と違ってWBCや日本シリーズのような短期決戦では、選手のコンディションやツキなども的確かつ即座に見極めることが勝敗のカギを握っています。原監督もその重要性についてはメディア等でコメントしていますが、思えば2008年の日本シリーズ、戦前の予想ではジャイアンツ有利と言われながら第7戦までもつれ、4勝3敗でシリーズを制したのは、就任1年目の渡辺久信監督率いる埼玉西武ライオンズでした。有利といわれながらも勝てなかったジャイアンツ。その敗因はいくつか挙げられると思いますが、中でも李承ヨプ選手の不振は深刻なものでした。

ライオンズでは、早くから李選手をマークしていました。北京オリンピックで見せた韓国代表としての大活躍を目の当たりにしているだけに、調子づくと手がつけられない李選手を抑えてジャイアンツの勢いを封じ込めることは、ライオンズとしては当然の施策といえました。そしてそれは見事に成功します。

原監督としてはたとえマークされているのがわかっていても、李選手の復活を信じていたはずです。それゆえに使い続けたのだと思いますが、テレビを通じて頬が痩けたのではと思うくらいに冴えない表情をしている李選手を見ていると、タケムラはふと原監督が現役時代に出場した、19年前の1989年の日本シリーズを思い出しました。

1989年当時、パ・リーグはライオンズ黄金時代の真っただ中でしたが、この年だけは前年に繰り広げられた「10.19の悲劇」の借りを返すべく、仰木彬監督率いる近鉄バファローズが、ライオンズとオリックスブルーウェーブの三つ巴を制して日本シリーズに勝ち名乗りを挙げました。対するセ・リーグでは、6年ぶりに復帰した藤田元司監督のもとで、強力な投手陣を中心とした読売ジャイアンツが2年ぶりのリーグ制覇を成し遂げ、日本シリーズへとコマを進めたのでした。

バファローズ対ジャイアンツの日本シリーズは、プロ野球の歴史の中で初めての顔合わせ。戦前ではジャイアンツ有利という大方の予想を覆し、バファローズは第1戦から第3戦まで一気に3連勝して日本一へと王手をかけます。第4戦はジャイアンツの香田勲男投手が完封勝利を納めたものの、ジャイアンツはバファローズに苦戦します。その原因のひとつが原選手(当時)の大不振でした。

当時はジャイアンツの4番打者としてチームを引っ張っていた原選手。この年は守備位置をサードからレフトにコンバートされたものの、入団から9年連続20本以上のホームランを記録するなどの強打ぶりは健在で、日本シリーズでもその活躍が期待されていました。しかしバファローズの厳しいマークに遭い、第4戦までヒットすら打つことができず、打順も4番から外されてしまいます。マスコミはジャイアンツ不振に対する批難の矛先を原選手に集中しますが、そんな中復活を信じて打順を下げてでも使い続けたのは藤田監督でした。原選手は藤田監督の心意気を感じつつ、目を真っ赤に腫らしながらも復活に向けて黙々と試合に出続けました。

第5戦、7回裏で2対1とリードしていたジャイアンツは、この回に斎藤雅樹投手と勝呂博憲選手が出塁します。2アウトながら1.3塁のチャンス。バファローズバッテリーは、この日4番に入ったウォーレン・クロマティ選手を敬遠し、2アウト満塁して5番の原選手との勝負を選択します。これに燃えた原選手は、バファローズの吉井理人投手がカウント2-2から投じた低めのストレートを見事にレフトスタンドへとはじき返しました。最前列に飛び込む打球。それはシリーズの流れを大きくジャイアンツに傾けた満塁ホームランでした。結局この試合に6-1で勝ったジャイアンツは第6戦と第7戦にも勝ち、3連敗から4連勝の離れ業を演じて8年ぶりの日本一の座に就くわけですが、第5戦が終わりお立ち台で原選手が涙まじりにヒーローインタビューに応じる姿は、打てなかった苦悩を物語るシーンとして今でも印象に残っています。

あれから19年。ジャイアンツの監督として自身3度目の日本シリーズに挑んだ原監督は、李選手が不振で苦しむ姿に、かつての自分を投影させたかどうかはわかりません。ツキも含めた選手起用の難しさが今回のWBCでも再現されるとしたら、その時日本代表としての原監督はどのような決断を下すのか、タケムラがWBCの見所のひとつとして楽しみにしているところです。

WBC主催国でもあるアメリカは、辞退者が多いと言われながらも現役メジャーリーグ選手を何人か揃えてきています。北京オリンピックで金メダルを取った韓国もWBCには国の威信をかけて覇権奪取に挑んでくることでしょう。ドミニカやキューバの存在も決して侮れません。WBC連覇を目指す日本にとっては決して優位な状況にあるとは言えないところですが、シアトルマリナーズのイチロー選手やボストンレッドソックスの松坂大輔投手を始めとした日本人大リーガーに、北海道日本ハムファイターズのダルビッシュ有投手や読売ジャイアンツの小笠原道大選手など、日本球界を代表する選手たちが顔を揃えています。原監督の采配にも注目しつつ、選ばれし「サムライ・ジャパン」たちの活躍にも期待したい今日この頃です。

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