塗り足し

印刷通販にご入稿いただくお客さまのデータで、時折仕上がりサイズで作成されたものを見かけることがあります。このような場合、トンボを付けていただくようにお願いするか、Photoshopで作成されている場合には塗り足し部分を確保していただくようにお願いして、データの再入稿をしていただいておりますが、その際に『塗り足し』の必要性についてお問い合わせをいただくことがあります。ということで、今回の《印刷通販の基礎用語》では『塗り足し』について取り上げてみたいと思います。

塗り足しは『ブリード(bleed)』と呼ばれることもあります。英語のbleedには「裁ち落とす」などの意味がありますが、その意味の通り、印刷における塗り足しとは裁ち落とされる領域のことを指します。例えば名刺を作るにあたって、そのサイズ目一杯に画像を配置したり色アミを引いたりする場合、天地左右でそれぞれ3mmずつ大きく作って頂いております。名刺サイズは9155mmですので、3mmずつ大きく作ったサイズは9761mmとなります。この3mm大きく作る領域が『塗り足し』となるのです。そして、印刷は仕上がりサイズの紙で行われるのではなく、以前ブログでもご紹介した『トンボ』がついた状態で、塗り足し部分も含めてもっともっと大きな紙に印刷されます。このトンボには印刷版の位置を合わせるほかに、塗り足し部分と仕上がり位置の領域を線で示す意味もあるのです。

大きな紙に印刷された印刷物は、その後仕上がりサイズに断裁されてゆきますが、一枚一枚ではなく、一度に大量の印刷物を断裁機で裁断します。その際、断裁機内の『クランプ』と呼ばれる加圧装置で、紙がずれたり動いたりしないように固定して一気に断裁刃を降ろしていくわけですが、このときに一番上の紙と一番下の紙の断裁位置が少しずれることがあります。ズレが起こる要因は、紙種に応じたクランプ圧の調整状態や、それに伴う刃先の微妙な流れ、断裁刃先の状態、それとは別に印刷された紙にインキが付着することによる紙面の収縮度合いなどがあげられます。これらの要因が絡み合って起こる断裁ズレは、外的かつ物理的な要因に左右されるアナログな一面があります。断裁誤差を全くゼロにするということが大変難しいために、塗り足しと呼ばれる領域が設けられているのです。塗り足し領域がない仕上がり位置での作成がNGであることや、微妙な断裁位置のズレが生じる理由については、このような背景があるのです。

例えば刃幅がない刃や全く伸縮しない紙、これらが実現できれば断裁の誤差はなくなるかもしれません。でもそれは現実的には不可能であることを考えると、いかにして断裁誤差をゼロに近づけるような手段を講じるかにかかっていると思います。断裁機の日々のメンテナンスや、断裁加工に携わるオペレータの技量もそのひとつなのですが、彼らも日々の業務と並行して検証と訓練を続けながら、断裁精度をより高められるように技量のアップに努めています。

塗り足しが設けられている理由についてご理解頂けましたでしょうか?このように考えると、仕上がり位置サイズの内側に均等に罫線を引くようなレイアウトも、仕上がり位置に近ければ近いほど断裁誤差がたとえ僅かであっても目立ってくるかと思います。デザイン上の問題などもありますので一概に言えませんが、天地や左右の均等幅をより緻密にお考えの場合には、できれば避けられた方が無難かもしれません。


塗り足しとトンボについては当社サイトのテクニカルサポートのページもご参照ください。


【塗り足しを作成しよう】
http://www.graphic.jp/datacheck/biggner001.html

【DTP基礎知識 塗り足しとトンボ】
http://www.graphic.jp/technical/print_trim.html


◎画像はクリックしていただくと拡大表示されます。