『電子顕微鏡で見る紙の世界』
これでも同じ135kgなんです。

以前、当店のサンプルをご請求いただいたお客さまより、こんなお問い合わせをいただきました。

「135kgって書いたサンプル紙がいくつか入ってますけど、厚みが違うのがたくさんありますよね。これって本当は厚い方が重いんじゃないんですか?」

確かに同じ連量であっても厚みがある紙と薄い紙を比較すると、嵩の厚い紙の方が重く思えても仕方ないかもしれません。でも、実際のところ抄紙(しょうし)工程(=紙を製造する工程)の違いによって紙の厚さやベース紙の密度の加減が変わってきますので、一概に「厚い紙=重い」とは言えないところもあります。また、「厚い紙=重い」といった思い込みが、「厚い紙=高価な紙」と言った間違った認識を生んでしまっているような気もします。では同じ連量なのにどうして厚みが違うのか、ということで、『電子顕微鏡で見る紙の世界』最終回の4回目ではコート紙上質紙の断面写真を比較しながら、その違いについて見てゆきたいと思います。

それぞれの紙で、灰色に見えているところが紙の繊維であり、黒く見えているところが繊維間のすき間になります。比較してみると、上質紙にはすき間がところどころに見られますが、コート紙には上質紙ほどのすき間の大きさがありません。これでも四六判で同じ135kgの連量の紙です。コート紙と上質紙の厚みが異なるのは、断面写真にも示す通り明白ですが、どうやらコート紙の方が紙の密度が高そうにも見えます。実はここに紙厚の差のヒミツが隠されているのです。

上質紙は非塗工紙なのでカレンダー処理が行われないのに対し(メーカーによってその工程は若干異なります)、コート紙は塗工処理を行った後に「スーパーカレンダー」と呼ばれるローラーに紙を通して、艶を出すべく磨きをかけます。その際、紙に強い圧力がかけられ、塗工面の平滑性が高まると同時にベース紙も圧縮。そうすると、紙の繊維間がつまった密度の高い紙ができあがります。このような抄紙工程の違いにより、同じ連量でありながら違う厚さの紙が生まれるのです。

また、塗工剤の量やスーパーカレンダーの長さによって紙表面の平滑性や紙厚が変わってくることを考えると、抄紙工程の段階でその分工程数が増えているわけなので、単に厚いだけの紙が値段も高いというわけではないこともおわかりいただけるかと思います。

さて、4回にわたってシリーズとしてお送りしてきた『電子顕微鏡で見る紙の世界』でしたが、いかがでしたでしょうか?紙に関する知識としてお役立ていただければ幸いです。機会がありましたらまたこのような企画をやってみたいと思っています。

◎ 見本写真
コート紙135kg、上質紙135kg
☆連量はいずれも四六判換算です。


◎画像はクリックしていただくと拡大表示されます。


【過去の記事一覧】
『電子顕微鏡で見る紙の世界』人気の紙に迫る! ~アラベール~
『電子顕微鏡で見る紙の世界』人気の紙に迫る! ~ケナフ100GA~
『電子顕微鏡で見る紙の世界』人気の紙に迫る! ~ヴァンヌーボVG~