ビビリ克服 -前編-

細身の体型に黒の革ジャンと黒の革パンツを身にまとい、サングラスの奥には鋭い眼光が隠れているそのお客さまは、音楽関係のお仕事をされている方でした。ご来社になるといつも「ナカノさん、お願いします」とだけ言って黙って席にお座りになります。当店がオープンしてまだ間がないころで、店長は、現在当店を統括管理しているナカノでしたが、ほどなくナカノがやってくると、そのお客さまはご入稿のデータについてイロイロお話いただいたのち、データを預けてお帰りになります。
実はそのお客さまがご来社になると、タケムラはなぜかいつもビビっていました。一方のナカノはそんなことは全然気にしてないようで

ナカノ:「だーいじょうぶ、大丈夫、タケちゃん、ビビってたらアカンで~(笑)」

と背中をポンとたたかれることもありました。自分が悪いことをしているからビビっているわけではないのですが、今から思うと、その方から感じられるオーラのような威圧感と、物静かだけど迫力ある雰囲気にビビリを感じて飲まれていたような気がします。

ある日のこと、いつものようにご入稿データを携えてご来社いただいたそのお客さまは、やはりいつものようにうつむき加減に「ナカノさん、お願いします」とだけ言って席にお座りになりました。ただ、そのときナカノは外出しており、しばらく戻ってこないことを知っていたので、タケムラがそのお客さまに応対することになりました。ナカノが席を外している旨をお伝えすると、お客さまは「えっ?」と顔を上げて、タケムラの顔を見ました。お客さまの眼光がいつもより少し鋭くなっていることをサングラス越しにも感じたタケムラは、いつも以上にビビってきたのですが、ここは一発勇気を振り絞ってお客さまのデータをお預かりして、データチェックにまわしました。ほどなくデータチェックが終わり、テクニカルサポートスタッフからデータとカンプを受け取ろうとすると、データに問題があるとの報告を受けました。06_12_18NO_36.jpgスタッフより状況と回避策を確認したのち、お客さまにカンプをお渡しして事情を説明すると、そのお客さまは、お渡ししたカンプをジッとにらむような感じで見つめ、そして少し表情がゆるんだかと思いきや、顔を上げるともっと目つきが鋭くなっていました。ヤバッ、ビビリの感情が増してくるタケムラ。そして、お客さまの次のひとことでビビリの感情は最高潮を迎えてしまいました。

お客さま:「そんなん、今まで聞いたことないわ! 画面ではそんな段差見えなかったやん! うちのプリンタでもわからへんかったで! ほな、どうしたらいいんやねん!」

続きは次号!!